《MUMEI》

「そんな事無いわよ。最近は、ちゃんと食べてるし」
高山が、いつも通り明るく答える。

(良かった)

入院当初は、点滴だけだったから、安心した。


(…待てよ?)


これは使える。


俺は、大さんが座っていた椅子に座った。

祐希は病室の隅にあった椅子を持ってきて、俺の隣に座った。


「やっぱり痩せたんじゃないか?」


そう言いながら、俺は貴子さんに言われた『行動』を実行した。


そっと高山の方に手を伸ばし…


色白な高山の手首を、小麦色に焼けた手で、優しく、包み込むように、…掴む。

「…な?」


そうして、高山の顔を覗き込んでみた。


『触れて、見つめる…』


これが、貴子さんに言われた『行動』だった。

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