《MUMEI》

高山は、深くうつ向いたままだった。


―そこへ。


祐希が、そっと手をのばすと…


パシッ!


「…あぁ、そう。
慎限定、ね」

祐希が赤くなった右手を見つめた。


祐希が触れる前に、高山が祐希の手を振り払ったのだ。

「…」

祐希の言葉にまた顔を赤くした高山が、祐希を無言で睨んでいた。


(何か…)

「高山、うちのチビみたい」

「「は?」」


俺の呟きに、高山と祐希が同時に反応した。


(ヤベ…)


実は、『チビ』とは我が家のペットの三毛猫の事だ。
俺だけにすごくなついていて、他の家族が触ろうとすると、猫パンチを繰り出すのだ。

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