《MUMEI》

「仲村先輩なら、剥がしてくれると思いましたよ」
「何で?俺?」


「それは…」
「慎、そろそろ帰るぞ!」
祐希が貴子さんの言葉を遮って、立ち上がった。

「祐希…でも、まだ…」
「そ、そうね、私も今日は疲れたし…」

高山も祐希の言葉に賛同した。


「…じゃあ」

(…ん?)

立ち上がる俺の上着の裾を、高山が掴んだ。


「…何?」
「…今日はごめんね、いろいろ。また、…会ってもらえる?」


俺を見上げる高山の目が少し潤んでいて、ドキドキした。

「う、うん」
「俺は?」

祐希が俺の肩を抱きながら質問した。

「もちろん、三人でよ」

高山が笑いながら答えると、祐希は安心した様子だった。

そんな俺達を貴子さんは不思議そうに眺めていた。

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