《MUMEI》 高山の妹は明らかに高山と慎をくっつけようとしていた。 おそらく、高山の慎に対する想いを、知っての行動だろう。 (知らなきゃ良かった) 今までの高山は、慎にとって恋愛対象になりえない存在だったから、安心していたのに… 俺は、不意に、右手を見つめた。 そういえば、俺は何故高山に触れようとしたのか? 今まで攻撃や威嚇以外で、手など伸びなかったのに… そもそも、俺の方から、女に触れようとした事など初めてだった。 ―ズキズキする。 そんなに強くされたわけでもないのに、何故か手を見つめていると、痛むものがあった。 (そんな事より…) 今考えるのは、慎の事だけだ。 いや、これからも、それだけだ。 ―俺には、慎しかいないから。 前へ |次へ |
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