《MUMEI》 その時ふと、藤原と以前にした会話が頭をよぎった。 『家ってさ、お前にとって何?』 あっさりとこれから住む家を決めた奈々に、この質問をしたらどんな返事が返って来るのか興味が湧いたので聞いてみた。 「私にとっての家ですか?私は普通に生活出来たらそれでいいです。女の子らしくないですよねこれって。別にお洒落なところに住もうなんて思わないんです」 「普通に生活出来たら………良いか。普通って何だろうね?」 意味深な質問に奈々は不思議そうに首を傾けるだけだった。 「奈々はこれから自分の家を自由に作れることになるだろ。もし…………もし、自由に作れるのに、自分の思い通りに行かないとしたらどういう理由があると思う?」 これから一人暮しを始めるのに残酷な質問だと思った。でも自分ではわからなかった。藤原が何を言おうとしていたのかが。奈々ならわかるかもしれない………そんな期待を持ちつつした質問だった。 前へ |次へ |
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