《MUMEI》

「何を言う!可愛い妹のためだから、当たり前だ!」
そして、ガラの悪い男性―秀…先輩は、志穂を抱き締めた。

秀先輩は、俺達の二つ上で、中学時代、同じサッカー部だったから、面識があった。

ちなみに、高山兄妹の現在の年齢は、
長男29歳・次男27歳・長女25歳・次女24歳だ。


(この声は、確かに秀先輩だ)

しかし、当時は髪の毛があったし、こんなに…迫力はなかった。


「お久しぶりです、秀先輩」
「おぉ、慎!久しぶりだな」

俺が挨拶すると、秀先輩は、サングラスを外した。

(あ…)

そこに隠れていたのは、見覚えのあるやや細めの目。俺に向ける少年のように無邪気な笑顔も、変わっていなかった。


「そっちの彼が、『南中の屋代君』だね!はじめまして、志穂の兄の秀です」
「どうして…俺の名前」

秀先輩に求められるまま、握手をかわしながら、祐希が質問した。

「そりゃ、一年ですごい奴がいるって有名だったからね!
学年が同じだったら、勝負したかったよ」
「…ありがとうございます」

祐希が嬉しそうに礼を言った。

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