《MUMEI》

祐希から手を離すと、秀先輩はまた志穂の側に行った。

「…さて、行くか」

志穂に話しかける秀先輩の表情は、先程と違い、真剣なものになっていた。

「…はい」

答える志穂の表情も、何故か険しい。

(?)

「あの?」
「これから、二人で警察に行くんだ」
「「警察?!」」

秀先輩の言葉に、俺と祐希が、同時に驚いた。


「『あの人』が、最後にどうしても私と話したいと言っているらしいの」

『あの人』とは…
志穂を傷つけた犯人。
元夫の事だ。

「大丈夫か?」
「その為に、俺が付いていく」

俺の質問に、秀先輩が答えた。

(だから…)

秀先輩は、迫力のある格好で来たのだと、納得した。

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