《MUMEI》 「そうだ、君達に頼みたい事があるんだけど」 「何でしょうか?」 俺は、緊張して秀先輩の言葉を待った。 隣で祐希も、唾をゴクンと飲み込んだ。 「簡単だよ。俺は今夜仕事なんだ。 だから、警察から戻った志穂の世話を頼みたいんだ」 「「「世話って…」」」 秀先輩以外の三人の声がハモった。 「あ、もちろん一晩だけだよ。 これ、志穂のマンションの鍵と、入口のオートロックの暗証番号ね。 志穂の荷物は俺が後で持っていくから」 そう言うと、有無も言わさず、鍵と、暗証番号の書いてあるメモを俺に握らせた。 「ちょ、兄さん!」 「はいはい。 いいじゃないか、慎はお前の『初恋の君(きみ)』なんだから。 さ、行くぞ」 そう言うと、秀先輩は、志穂をヒョイとお姫様だっこし、荷物を持つ。 そのまま… 駆け出して行ってしまった。 あまりの急展開に、俺と祐希は呆然とその場に立ち尽くしてしまっていた。 前へ |次へ |
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