《MUMEI》 「どうしようか、これ」 「マンションの管理人にでも、預けて帰れば?」 祐希がきっぱりと答えた。 (そうだよな…) 一人暮らしの女の部屋に、いくらその兄にいいとは言われても、勝手に入るのは気が引けた。 「でも…一人じゃ、不安だよな」 「だからって俺達が行くのは、おかしいだろ?」 祐希の言葉は正しい。 (だけど…) 俺は、何となく志穂を一人にするのは心苦しい気持ちがした。 すると… 「あれ、まだここだったんだ?」 廊下から病室内に美声が響いた。 扉は、秀先輩が開けっぱなしにしていったからだ。 「大さん…」 前へ |次へ |
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