《MUMEI》

「お、ちゃんといるな」

志穂が扉を開けると、秀先輩が入ってきた。

手には、旅行用バックと、たくさんのビニール袋を持っていた。

秀先輩は、そのバックを志穂に手渡した。

中身は、どうやら志穂が入院中に使っていた荷物のようだ。

「洗濯物は、後で貴子が届けるからな」
「自分でやるのに…」

志穂は苦笑したが、秀先輩は「いいから!」と押しきった。

「さてと…」

秀先輩は、俺と祐希がいるテーブルに、ビニール袋の中身をどんどん置いて行く。

ちなみに、俺と祐希は、貴子さん言われて、ダイニングキッチンの四人がけのテーブルセットの椅子に座って、志穂を待っていた。

志穂の部屋は、一人暮らしとは思えないほど広くて、他に、フローリングの居間と、チラッと見た限りでは、部屋が二つあるようだ。

(やっぱり、お嬢様なんだな)

俺はしみじみ思った。

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