《MUMEI》 俺と祐希の缶が開けられる度に、自然と三人の会話も弾んでいく。 「それにしても、久しぶりに会った秀先輩がスキンヘッドになってたのには、驚いたよ」 「あれね、料理に髪の毛が入ると困るからって理由みたい」 「ハァ〜、すごいな」 俺が感心していると… 「それより、高山兄妹パワーが凄かった」 と、隣で祐希が呟いた。 俺もウンウンと大きく頷いた。 「ごめんね、皆悪気は無いんだけど…」 志穂が頭を下げると… 「あのさ…もしかして、両親もあんな感じ?」 と祐希が質問した。 (だったら…怖いなぁ) 俺は、恐る恐る志穂の答えを待った。 「う〜ん。…お父さんは、普通かな?…でも…お母さんは、もっと凄いかも」 「「もっと?!」」 俺と祐希は同時に驚いた。 あれより凄いって… 「どう、凄いの?」 俺は訊きたく無かったけれど、祐希が更に質問してきた。 「いろいろ。まぁ、来年の春には会えるわよ」 (来年の春…) それは、『お試し期間』の終わりだった。 前へ |次へ |
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