《MUMEI》

「まぁ、いいや。…俺の事は。それより、慎が初恋の君ってどういう事だ?」
「え?!」

突然話題を変えられ、志穂が戸惑う。
みるみるうちに、顔が赤くなっていく。

「なぁー、慎だって知りたいよな?」
「あぁ、…まぁ」

ニヤニヤする祐希に、俺は、一応同意した。

「聞く権利、あるよな?」
「う…」

祐希は、志穂より優位に立てた事が、かなり嬉しいようだった。


「わ、私、疲れたから!今日はいろいろあったし!
お風呂入って寝るね!
客間、そこだから!」

志穂が慌てて立ち上がる。
「逃げる気か?」
「疲れたの!」
志穂が祐希を睨んだ。

―その時

ガッ


机の角に腰をぶつけた志穂が、よろける。

向かいに座っていた俺は、思わず手を伸ばして、体を支えた。

(あ…)

俺の手が…

志穂の…

胸、に…

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