《MUMEI》

ドサッ

志穂を支えきれず、俺は椅子ごと後ろに倒れた。

俺の腕は、さっきからずっと、志穂の胸の、下。

「「ご、ごめ…」」

俺と志穂は、同時に謝る。
「志穂ちゃん、何、慎、押し倒してんの?」
「!」

祐希の言葉に、慌てて志穂は、起き上がった。

…確かに、そう見えない事も無い、状況だった。

「じゃ、じゃあ、私、お風呂入るから!
あと、適当にゆっくりしててね。
洗い物とか、そのままにしといてね。
えっと…」

それから、志穂は、祐希の耳元で何か囁く。

「…了解」

祐希は、ニヤリと笑った。
志穂はパタパタと小走りで、バスルームに消えた。

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