《MUMEI》

志穂が走り去っても、俺はまだ起き上がれずにいた。
腕に残る、柔らかい感触。
祐希とも、俺とも違う、『女』の、体。

俺は、意味もなく手を開いたり閉じたりしていた。

何だかさっきから、やけにドキドキしていた。

「し〜ん、顔、赤いぞ?」
祐希が顔を覗き込んできた。

俺は、両手で頬を押さえた。

(熱い…)

「志穂ちゃんの体に欲情しちゃった?」
「バッ…、そんなわけないだろ」
「どうかな〜?慎は、ちゃんとしたオトコノコだし」
そう言うと、祐希は、俺を抱きかかえた。

「ちょ、何すんだよ!」
「ん〜ナニするのは、この後だよ」

男としては、屈辱のお姫様だっこをされたまま、俺は客間に運ばれた。

部屋には、ダブルベットと、床に一組布団が敷かれていた。

ドサッ

祐希は俺を少し乱暴に、ベッドに下ろした。

「高山兄妹が、時々泊まりに来るから、シングルじゃなくてダブルなんだって。
俺達には、好都合だよね」
祐希は、服を脱ぎながら、ベッドに上がってきた。

そして、俺のシャツのボタンを外していく。

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