《MUMEI》

「あのね…そんな格好で来ないでくれる?」
「は?」

俺は、冷蔵庫を開けながら、振り返る。

志穂が、俺を睨んでいた。
心無しか、顔が赤いような気がする。


「別に、俺の裸なんか興味無いだろ」
「それは、そうだけど…目のやり場に、困るのよ。
一応、私、女なのよ?」

そう言って、志穂は俺から顔を背けた。
…耳まで赤くなりながら。
(ふ〜ん)

いつも冷静な志穂が、こんな事くらいで赤くなるとは思わなかった。

俺は、ミネラルウォーターペットボトルを取り出し、冷蔵庫を閉めた。

本当は、このまま慎の眠る部屋に戻ろうかと思ったが、気が、変わった。

コトン

俺は、ペットボトルを机に置き、目の前でうつむいている志穂に手を伸ばした。
当然、反射的に志穂が俺の手を弾き返そうとする。

パシッ!

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