《MUMEI》
朝(祐希視点)
「あぁ、もう、最悪…」
俺は、誰もいない部屋で一人頭を抱えた。

寝不足で、こめかみのあたりがズキズキしていた。

職場で夜勤もあるから、俺は割とどこでも眠れる体質なのに…

それでも、慎が部屋を出ていく気配がしたから、起きなければと、自分を奮い起こし…

―慎が部屋を出てから15分後。

俺はようやく布団から出た。

そして、そこから15分かけて、ノロノロと、洋服に着替える。

カチャッ

「お、起きたか、祐希」
「慎…」

爽やかで、眩しい俺の愛しい恋人が、とびきりの笑顔で入ってきた。

俺は、布団の上で正座していたが、吸い寄せられるように、立ち膝の状態で慎に歩み寄り、目の前にある細い腰に抱きついた。

慎からは、風呂上がりの、いい匂いがした。

(あぁ、癒される…)

俺は、慎の体に顔を押し付けた。

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