《MUMEI》

「祐希?おい!何寝ぼけてるんだ?!」
「そんなんじゃないも〜ん」

離れようとする慎の体に、俺は頬擦りをした。

―その時

トントン

誰かが後ろから、俺の肩を叩いた。

まだ半分夢の中の俺は、それを無視した。

すると、耳元で『誰か』が囁いた。

「今度こそ、蹴り、いる?」



俺は、その言葉で一気に目が覚めた。

恐る恐る振り返ると…

「そこまでにしといてね。朝食冷めるから、早く食べましょう、ね?」

ニッコリと笑う志穂がいた。

…目が笑っていない。

「…は、はい」

返事をしながら、志穂が包丁を持っていなくて良かったと、俺は、心から、そう思っていた。

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