《MUMEI》

一時間ほど、食休みした後。

祐希が自分のアパートに帰って寝直すと言うので、俺も一緒に志穂のマンションを出る事にした。

「大丈夫か?」
帰り際、志穂に俺が確認すると、志穂は…

「うん、いろいろありがとう」
と笑顔で答えた。

(良かった)

柔らかい自然な感じの笑顔だったから、俺は安心した。

「いろいろ、悪かったな」
「いいわよ、別に」

祐希の『いろいろ』は、志穂が俺に倒れこんだ時の祐希の態度と、今朝の寝起きの悪さの事だろうと、俺は思った。

「じゃ、帰るか」
俺が祐希に声をかけると、祐希が大きく頷いた。

「また、メールするね」
そう言って、志穂が笑顔で俺と祐希を見送ってくれた。

それから、祐希とは、祐希の車がとめてある市営立体駐車場前で別れた。

今日は、祐希は夜勤で夕方から仕事だから、昼間休まなければいけない。

(たまには、のんびりするか)

俺は家に着くと、適当に本を読んだり、CDを聴いたりして、その日の残りの時間をゆったり過ごした。

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