《MUMEI》

アンコール二曲目が、始まった頃。

ピンポーン

玄関のチャイムが鳴った。
「は―い」
画面に釘付けの祐希にかわって、俺が返事をする。

ガチャッ

扉を開けると、志穂が箱を持って立っていた。

「メリークリスマス」
「あ、あぁ」

照れながら志穂が笑うから、俺もつられて照れてしまった。

そもそも、俺は、クリスマスだからとはしゃぐタイプでは無いし。

「はい、これ。頼まれたもの。…祐希君は?」
「あっちでDVD観てる」

俺は、志穂から箱を受け取りながら、答えた。

「…貴子さんは?」
「下で待ってる。じゃあ、後、…これ」

志穂はコートから、封筒を出した。

緑色の封筒には、赤いリボンが付いていた。
クリスマスカラーだ。

「? 何? これ?」
「二人に、クリスマスプレゼント」

そう言って、志穂が俺に差し出した、封筒を…

「お、サンキュー。
ケーキもありがとな」

そう言って、いつの間にか俺の背後に来ていた祐希が、俺の肩越しに長い腕を伸ばし、受け取った。

「どういたしまして」

志穂が笑顔で言うと…

「じゃ、俺からは、これな」

祐希が、受け取った手とは反対の手に持っていた封筒を志穂に手渡した。

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