《MUMEI》

「…俺、慎に愛されてるし? ま、日帰りなら問題無いでしょ
それに…。
俺が空いて無いとき、慎が他の男に誘われて、クリスマス過ごすよりは、お前の方がマシだ」
「なるほど、ね」

志穂は納得したようだった。

(半分は、本当だけどな…)
もう半分は―志穂のマンションで、志穂を傷付けた事が、まだ心苦しかったからだ。

実は、慎は明らかに、志穂を『女』として意識しているから、少し、心配はある。

(それでも…)

慎は、俺を愛しているし、俺も慎に愛されている。

志穂がいても、慎は俺に抱かれるし、俺は慎を抱く。
その事実があるから、大丈夫だと、俺は思っていた。

「じゃ、これ、有り難く使わせてもらうな」
「どうぞ、私も使わせてもらうし」

俺と志穂は、中身を封筒にしまうと、階段を下りていった。

「じゃあね」
「あぁ」

駐車場で、軽く言葉を交わすと、俺は自分の車に、志穂は志穂の妹の車に、それぞれ乗り込んだ。

そして、俺は左折。
向こうは右折して行った。

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