《MUMEI》

俺は、祐希が好きだ。
俺は、祐希を確かに、恋人として愛している。
祐希に抱かれるのも、心地よくて、好きだ。

(なのに…)

志穂に惹かれる自分がどこかにいる。
こうして近くにいると、志穂に『男』として、触れてみたい気持ちが俺に、ある。

志穂は俺に『友達』として一緒にいる事を望んでいるのに…

志穂を『女』として、見ている自分がいる。

『お試し期間』は、残り少ない。

俺は、祐希と別れる気はない。
しかし、仮に志穂と結婚して、ずっと一緒にいて、『何もしない友達』状態を保てる自信がない。

志穂が、さまざまなトラウマや事情から、『結婚』出来ない理由はわかった。

しかし、一生未婚となれば、世間の目が気になるだろうし、誰か側にいてほしい。

だから志穂は、男の恋人がいて、自分に手を出しそうもない、俺を選んだのだ。
そんな俺が志穂を『女』として見ている事を知ったら、志穂はきっと俺から離れていくだろう。

祐希も、俺が志穂に…『女』に惹かれたと知ったら、俺から離れてしまうかもしれない。

志穂と『触れ合えない結婚』は出来ない。
多分、俺は志穂が好き…だと思う。

(なのに…)

祐希を変わらず愛する俺がいる。

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