《MUMEI》
観覧車
それから俺と志穂は、遊園地を楽しんだ。

混んでいたからそれほど乗り物は乗れなかったけど。
それでも、楽しかった。

はぐれるといけないからと、俺から手も繋いでみたりして、途中から本当にデートみたいだった。

「最後はやっぱりこれでしょう」
「う、うん」

俺達は、観覧車に乗り込んだ。

向かいあって、座席に座る。

「楽しかった、今日はありがとう」
そう言って、夕陽が照らす、志穂の笑顔は可愛かった。

「…こちらこそ」
俺も笑顔で言った。

それから、無言で景色を眺めていた。

(何だか、眠い…)

俺の、瞼が、段々と重くなってきた。

―その時。

「大好きよ。ずっと…」

囁く声が聞こえた。

(…ん、今のって)

俺が目を開けると、志穂が寝息を立てていた。

「おかえりなさいませ」
「すみません、もう一周お願いします」

あまり気持ちよさそうだったから、俺はドアを開けた係員に、延長を申し出た。
「行ってらっしゃいませ」係員は笑顔でドアを閉めた。

景色が、再び下から上へと上がっていく。

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