《MUMEI》

「私、変な寝言とか言った?」

志穂は真剣な表情だったが、俺はホッとして、笑った。

「やっぱり?!」

志穂が慌てたから、少しからかってみたくなった。

「あぁ、『慎君大好きよ、ずっと』って…」

「…」

志穂が無言で耳まで真っ赤になった。

「え、し…」
「おかえりなさいませ」

俺が話しかけようとすると、係員がドアを開けた。

―その瞬間。

志穂が飛び出した。

「お、おい!待てよ!」

俺も慌てて追いかける。

いつもの志穂なら逃げ切れたかもしれない。

しかし、今日、志穂はブーツで。

俺は、走りやすいスニーカーだった。

それに、人混みにまぎれても、志穂は目立つから追いかけやすかった。

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