《MUMEI》
皇国の使者
数分後・・
違うテントの中に並んで座っているエミ、ハンディング、式夜、アイズ、ごま。
「お前等なぁ・・もう少し状況を考えてくれ。」
正面に座っているバンプが頭を抱えながらうめく。
「申し訳ありません・・」
「ごめんなさい。」
「ごめん・・」
「きゅ?」
「すまぬ。」
それぞれが謝罪する。
「・・現在ココにはコーリアの軍と、皇国の軍が向かってる状態なんだ。こっちの決定としては皇国に助けてもらうつもりで移動の準備をしてる。」
「コーリアって・・」
エミが思わず言葉を漏らす。
「あぁ、証拠は無いが・・今回の事件を起こしたのは間違いなくコーリア教のやつらだ。そんな最中にこちらを助けるとは考えられない・・つまり残った俺たちを殺すか捕虜にするつもりだろう。」
聖殿での状況を思い返しながらバンプは言葉を続ける。
「皇国の方からの申し出は保護及び、街の復興支援。生憎だが、俺はロゼ女王を知っている訳では無いが・・彩詩やハンディングの話から想像するに信用できると判断した。」
「要するに・・皇国内に逃げるのね。」
「時間的な余裕は少ないんだが・・あまり騒げば住民が混乱するからな。お前等みたいなのが暴れてるとこっちの行動に支障が出る訳だ。お前等だって怪我をしてるんだ・・大人しく休んで少しでも戦える様にしておいてくれ。」
バンプの言葉に全員が頷き、静かにテントを後にする。
「有給休暇でも取って逃げたくなる・・」
一人になったバンプは大きくため息をつきながらそうぼやいた。

「禾憐、こっちだ。」
林の外れ、セイの前で蒼い毛並みの狼が止まる。
「お疲れ様。」
狼の背から降りる禾憐。
バシャン・・
と、禾憐が降りると同時に狼が水へと戻る。
「それで・・現状はどうなってるの?」
「皇国軍と合流するために準備しているようだが住民を混乱させないためにゆっくりとしか進んでない。」
「まぁ、そうだろうと思ってたけど。」
禾憐は頷きながら詠唱を始める。
「周囲に満ちる100の風音よ。私の声が聞こえる?聞こえるならば力を、鳥となって声を届けて・・」
詠唱を終えた禾憐の肩には翼に白い筋のある一羽の隼。
「お願いね〜」
禾憐が隼を一撫ですると隼は空へと羽ばたき飛んでいった。
「それじゃ、彩詩様・・じゃなくて指揮官に会いたいんだけど、セイ道案内お願い。」
「解ったよ。と言っても守護騎士の団長は意識不明のはずだし、副団長になるけどな。」
セイの答えに酷く落ち込んだ様子を見せる禾憐。
「そっか・・意識不明なんだ。」
背景が暗い。どよ〜〜んと音が聞こえてきそうなほど暗い。
「楽しみにしてたのになぁ・・ロゼ様が良く話をしてくださった騎士様と会えると思ってたのになぁ・・」
イジイジ・・
「皇国に移動するんだ、意識が戻った後でも話は出来るだろ?」
歩きながらも禾憐に気を使うセイ。
話をしているうちにバンプが居るテントの前に辿り着く。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫