《MUMEI》
生きろ
「銀也、おはよう」
 あれから・・1ヶ月が経った。
「銀也?」
 銀也はうつむいたまま何も答えない。
 そして・・皆が銀也に視線をぶつけていた―。
「どうした・・?」
「・・・・・・涼哉・・」
「ん?」
「・・・ぃぃ?」
「何?」
「死んでいい?」
「何、言ってんだよ・・」
「死んだほうがいいんじゃないかなって・・・・」
 銀也が顔をあげると・・その目はうつろで・・悲しそうだった。
「絶対やめろよ・・・」
「ありがとな・・・・」
 チャイムが鳴って席についた。
 肝心な時に友祥がいない。人を助けられる友祥が・・。
 
 俺は授業中・・銀也の背中を眺めていた。細い背中だった。

 授業が終わった後、日直だったから、日誌を書いていた。
 書き終わった頃に・・銀也はもういなかった―。
「銀也が・・・いない・・・・」
 男子トイレにも、他の教室にも・・職員室にもいなかった―。
 俺はただただ走った―。
「もしかして・・・」
 嫌な光景が頭によぎった。もしかして・・・屋上・・・に・・・?

 急いで階段を上がって・・ドアをあけた・・。
 フェンスを乗り越えたところに・・銀也はいた。俺は走りよった。
「銀也・・お前・・何して・・・」
「死のうと思っただけだよ・・・・・・・」
「死のうって・・・・?」
「ここから・・・飛び降りようと思って」
「やめろよ」
「ほっといてくれよ!!」
「ほっとけねーよ」
「いちいち、うるせぇんだよ」
「うるさくて悪かったなっ!!でも・・心友を見殺しに出来るかよッ!」
「・・・」
「こっちにこいよ・・」
「俺は死ぬんだ・・」
「やめろ・・死ぬなんて・・言うなよ・・親から産んでもらった・・体なんだぞ」
「親なんか・・俺のことなんとも思ってねぇよ」
「そんなことあるわけないだろ・・・・」
「俺なんか・・・誰にも必要とされてねぇからよ」
「俺は銀也が必要だよ・・友祥だって・・燐だって、優だって・・綾だって・・皆・・銀也が必要だよ」
「涼哉・・・・」
「ほら・・・こっちに来いよ」
「あぁ・・・・」
 銀也が見つめていた先に何があったんだろうか?
「俺・・・お前も・・友祥も・・苦しめたから・・」
「それって・・1ヶ月前の事?」
「そうだよ・・・」
「お前はもう充分苦しんだよ・・もうこれ以上・・苦しまなくていいんだよ・・・」
「涼哉・・・俺・・・」
「だからもう死のうなんてなんて考えないでくれよ」
「・・・・・・・あぁ・・・ありがとな・・・・」
 二人で屋上で空を見上げた。蒼く蒼く澄んで光っていた―。
 なぁ・・・銀也・・・お前は生きるんだ・・この世界で強く生きるんだ。生きてくれ―。

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