《MUMEI》

「後で一緒に入ろうな」
「…あぁ」

俺が答えると、祐希が後ろから抱きついてきた。

「志穂ちゃんに、感謝、だね」

何気ない祐希の一言に、俺の体がピクリと反応した。

「…慎?」
「何でもない」
俺は、祐希から離れようとした。

ギュッ

「…祐希?」
俺を抱きしめる祐希の力が強くなった。
俺からは、祐希の表情は見えなかった。

しかし、それは一瞬で、祐希はすぐに俺から離れた。
「いいさ。夜は長いし。
一年の終わりと始めに慎と過ごすのは、俺、だからな」
「祐希…」

「お茶でも飲むか」
祐希は明るくそう言うと、寝室を出ていく。

「あぁ」
俺も、後に続いた。

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