《MUMEI》 俺は、その仕草を見逃さなかった。 それは― 『嘘をつく時の祐希の癖』、だ。 「祐希、お前…」 「ん?」 祐希は、無意識にまだ右手で頭を掻いていた。 「志穂が俺と付き合えない、本当の理由、知ってるだろ?」 「な、何?突然? ただの、男嫌いだろ?」 祐希は、明らかに動揺していた。 「ゆ・う・き!」 今度は、俺が祐希をまっすぐ見つめた。 「…言うなって言われてるんだよ、志穂に」 祐希は、叱られた犬のように、小さくなった。 「いつ!」 「……志穂のマンションに、泊まった、時…」 祐希が、消えそうな声で、白状した。 (俺が熟睡してる時か…) それで、珍しく祐希の寝起きが悪かったのかと、俺は納得した。 前へ |次へ |
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