《MUMEI》
惚れた弱味(祐希視点)
元旦の夕方。

ハァァ〜

慎を送り、一人でアパートに戻った俺は、盛大なため息をついた。

俺は、明日から仕事始めだから、実家に戻らなかった。

俺の実家は、アパートからそれほど離れてはいないが、今は両親と、長男夫婦とその子供達が暮らしている。

正月は、そこに次男夫婦とその子供達が加わるから、俺のいるスペースは無かったし。

一応、顔を出せとは言われているから、明日日勤が終わったら、甥や姪にお年玉を渡しに行く予定だ。

「…物分かり、良すぎるよな、俺」

ポツリと、声に出してみた。

慎は、俺が好きだと言ってくれた。
俺に抱かれるのが好きだと…

―でも。

『俺、志穂も好きだ。
志穂を抱きたい俺もいるんだ』

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