《MUMEI》 どたばたおいかけっこ「イルカ〜っ!!こっちだよ、こっち〜っ!!」 広いドッグランのなかで、私とイルカは走り回って遊んでいた。 お母さんは苦笑いを浮かべて言う。 「盲導犬として、あれはアリなのかしら?」 お父さんも苦笑いを浮かべていた。 「ハアハア…。」 沙羅がヨタヨタ歩きながら戻ってきた。 「つっかれたあ〜〜〜〜〜っ!!」 沙羅はバタンと大の字に寝転がった。 「イルカ、走るの速くなったね!」 「オン!」 答えるように、イルカが吠えた。 「休憩したら、もうひと走りするぞっ!」 「「駄目」」 お母さんとお父さんが口を揃えて即答した。 「えー、何で〜っ?」 沙羅は駄々を捏ねる。 「イルカだって盲導犬の卵なんだから、訓練もしないと。ツーの練習だって」 「はぁ〜い…。」 沙羅は不満げに渋々頷いた。 「ノー!イルカ、ノー!!」 今、イルカがステーキ目掛けて突進&ジャンプをしているところ。 お母さんが笑いながら言った。 「全くもう、こんなので盲導犬になれるのかしら?」 隣でお父さんも苦笑している。 私は大きな声で言った。 「なれるよ!うん、イルカなら絶対ぜっっっっったいなれる!私が保証する!」 「ね、イルカ…」 振り返ったその時。 目に入ったのは、飛び散ったレタス。 私は一瞬ですべてを悟る。 「あ゛ーーーー!!!私のサラダーー!!!」 イルカはぴょいと跳びはね、部屋を出た。 「あ゛ー!待てこらイルカ〜!!逃がさない!!!」 バタバタバタバタ、いえ中が騒がしくなる。 おいかけっこの始まり。 「全くもう……。」 お父さんとお母さんは顔を見合わせ、その後大笑いした。 前へ |
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