《MUMEI》

「またお前、倒れてたのかよ…。」

浅田さんは、漬物をポリポリ食べながら、呆れた目線を探し屋になげかけた。

「しかたないでしょ?飴きらしてたんだから。」

探し屋は口をとんがらせて言った。




掃除が終わり、話をしようと思ったけど、とっくにお昼は過ぎていたので、浅田さんが自分の家からご飯と漬物を持ってきてくれた。

掃除をして、体を動かした後のご飯と漬物は、格別においしい。

で食事中に浅田さんと私は自己紹介をした。


浅田さんの本名は浅田政太郎(アサダマサタロウ)さんで、歳は22歳。探し屋とは高校の同級生らしい。
ってことは探し屋も22歳なんだけど、信じられない…。

今は近所の大学に通っている、大学生。

ほどよい長さの黒髪に、すっきりした服装を着こなす浅田さんは、好青年の代名詞と言っていいほど、ぱっと見、好青年。



私も軽く自己紹介をして、どこで探し屋と出会ったのかを浅田さんに説明していたら、冒頭の浅田さんの発言。



「浅田、今日は午後からアレないの?」

「あっ!忘れてた!やばっ!加恋ちゃんごめんね。俺用事あるから、失礼するね。」

そう言って、浅田さんはあたふたと家から出て行った。

「ねえ、探し屋アレって何?」

「…加恋ちゃん急にタメ口になったね…。それにイナちゃんとは言ってくれないんだね…。」

「なんか探し屋は年上って感じがしないんだよね…。外見は歳とってるように見えるんだけど…。それに探し屋の方がいいやすいし。」

最後のは嘘だけど。


「浅田には敬語なのに?」

「浅田さんは年上オーラが出てるもん。ゴキ○リに弱いのは、情けないけど。」

僕はゴキ○リなんかに負けないもん。とかブツブツ言っていたけど、無視。


「アレって何?」

「…草むしり。」

「草むしり!?こんな暑いのに!?」

「だってアイツの生きがいなんだもん。」

「生きがい…。」

「将来は、草むしり専門の会社を作るのが夢なんだって。」

私はここでやっとこの大原荘に来たときの違和感の謎が解けた。

アパートのまわりに、全く雑草が生えてなかったんだ。

普通はありそうなものがなくて、不思議に思ったんだ。

探し屋に聞くと、やっぱり3日に1度、浅田さんは大学に行く前に、早く起きてむしっているらしい。

「変わった人だね…。」

「ほんと、ほんと。」


うんうんってうなずいてるけど、アナタも人のこと言えないですよ?


「で、加恋ちゃんは結局探してほしい物、見つけた?」

探し屋は、ご飯をお茶碗半分くらいしか食べてないのにもう飴玉を口に入れていた。

「うん!」

朝起きてから、一生懸命考えたんだから。

「何?」

「私の初恋。」

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