《MUMEI》 「よぉ。」 佐藤と暫くしてまた会うことがあった。 いや、嘘。 俺が会いたかっただけ、待ち伏せておりましたよ、はい。 「……ん。」 なんだろ、佐藤少し雰囲気変わってる。 「お前、髪切った?」 「ちょっと、ね。」 切り揃えられた前髪を一抓み。照れ臭そうに顔を引き攣らせた。あんなにガキだったくせに俺を抜かして。 「夏川とは?」 単刀直入に聞く。 「友達だよ。友達。」 佐藤は右手に視線を落とした。 「……俺が佐藤と似てるなんて信じられないよなぁ」 なるべくオーバーにわざとらしく振り付ける。 「悪い冗談だ。」 そうだ。似てるものか。 俺はこんなまばゆく佇むことは出来ない。 「お前、いつから知っていたんだ。夏川のこと」 聞いてしまえ。こいつも俺もただの生き物だ。こいつだけ正しい、清廉なんてことはない。 前へ |次へ |
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