《MUMEI》

「……今帰り?」



しょーいちろー……。

「そう。お小遣貰っちゃったさ。」

せびっただけですがね。

「バァさんにか。」

言わせとけ。駅行こ。
昭一郎の横を擦り抜ける。

「……あ」

俺のシャツの裾を掴んできた。

「何さ」

離せよ。

「お前、何あった?
此処、嫌いなくせに来たりして……。」

離せ。

「心配したの?」

らしくねぇな。昭一郎。

「…………」

俯いてばかりじゃなくて何か言えよ。

「どったの昭一郎。なあ?」

昭一郎の頬を手の甲で撫でた。
触れたとこから攣ついたのを見逃さない。

「お前がどうしたんだよ。」

本当に心配されているみたいだ。

「気にすんな。」

離れかけた頬に手が未練がましく指を伸ばしていた。余計な詮索は無しだ。

俺が触れると昭一郎の片頬は引き攣れていた。

昭一郎の方が変じゃないか。

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