《MUMEI》

「何、するんだ、どけよ!」
「そんなに心配しなくても、俺は、あんた達みたいな趣味は無いから、安心していいですよ?」

俺を見下ろしながら、徹は妖しく微笑んだ。

『あんた達みたいな趣味』
その言葉に、俺はビクッとした。

「一体、何の、事だ?」
それでも、俺は、できるだけ冷静に言った。

徹は、軽く笑うと…
「海外生活長いせいか、『そういう人種』、わかるんですよね?

あの、背の高い、逞しい男の人、祐希さんでしたっけ?

あの人と、デキてるんでしょう?」
と、続けた。

「…」

俺は、言葉が出なかった。

「俺が気付く位ですから、志穂の両親に会ったら、一瞬で、バレますよ?

幸い、『あの人』には、まだ会ってないみたいですね」
「『あの人』?」

俺達の秘密に一瞬で気付く、『あの人』

「男も女もイケる人ですから……は」
「!」

(まさか…)

『あの人』、が。

俺の驚きに、徹が表情を変えた。
「あれ?もしかして、会ってます?
おかしいですね。
だったら、志穂に、あんたを諦めろって言いそうなのに。
何か企んでるかもしれませんね?」
最後に、徹はまた笑顔になった。

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