《MUMEI》

「それは…でも、俺にとっては、志穂も、大事な存在なんだ…」
「ハァ?何?それ!」

徹が俺のところへ、ツカツカと早足で歩み寄った。

「言ってる事わかってます?
可愛い顔して、二股ですか」

徹は、心底呆れている様子だ。

『二股』

俺は、その言葉に、胸が痛んだ。

(そうだよな、俺の考えって世間では、二股って言うんだよな…)

違いがあるとすれば、相手が男と女であるところだ。
徹は、盛大なため息をついた。

そして…

「志穂も可哀想に。
ずっと想い続けた彼が恋人がいて、それが男で。
しかも、二股しようとしてるんですからね。

志穂の両親が、俺を選んで正解でしたよ」
と続けた。

『両親が、選んだ』

「…それ、どういう意味だ」

俺は、恐る恐る訊いた。

「だから、あんたが最低だって…」
「そっちじゃなくて…」
「…あぁ」

徹が頷いた。

そして、俺は。
志穂の両親の、『計画』を知った。

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