《MUMEI》 それは、初めて、俺に向けられた、志穂の本当の笑顔だった。 (これは、惚れるよな) 女に興味無い筈の俺も、ドキドキするんだから。 そして、志穂は、俺に右手を差し出した。 「…何?」 「握手、して?」 ドキンッ 俺を見つめる志穂に、何故か心臓が反応した。 (落ち着け、俺…) 女にドキドキするなんて、おかしい。 …普通はそうでも、俺としてはおかしい。 「?…ダメ?」 「いや…」 俺は、恐る恐る、握手に応じた。 「これからも、よろしくね」 「あぁ…」 これから… 三人で… 俺は、志穂にドキドキしつつ、志穂に嫉妬しつつ、慎を愛していく…のだろう…と、覚悟を決めた。 前へ |次へ |
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