《MUMEI》

車の前に祐希が立っていた。

俺は、祐希に駆け寄ると、無言で抱きついた。

「…慎。どうした?」

祐希が驚いて、俺を見つめた。

「祐希、祐希…」

―その瞬間。
俺は、涙が止まらなかった。

「とりあえず、俺のアパート、行こう、な?」

俺は無言で頷き、助手席に座った。

(あれ?)

そこに、『誰か』のぬくもりがあった。

『誰か』

(まぁ、いいか…)

俺は、いろいろあり過ぎて、もう、何も考えたくなかった。

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