《MUMEI》 「まず、何か食べた方がいいな」 「…うん」 そう言えば、俺は、今日はまだ水しか飲んでいなかった。 祐希は、台所に立ち、調理を始めた。 泣き疲れていた俺は、横になって待っていた。 ―数分後。 「ほら、起きろ」 「ん…」 机の前には、大きめの土鍋と、二人分の茶碗とレンゲが置かれていた。 土鍋の中身は玉子とネギの雑炊だった。 「あれ、祐希も一緒?」 「正月食べ過ぎたから、この位がいいんだよ。熱いから、気を付けて食べろよ」 そう言って、祐希は二つの茶碗に雑炊を盛って、そのうちの一つを俺に手渡した。 「…美味しい」 「…だろ?」 薄味の味付けも、温かさも、祐希の優しさも、心に染みた。 「落ち着いたら、話せよ、な?」 「うん」 途中から、俺の涙で雑炊は少ししょっぱくなってしまった。 前へ |次へ |
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