《MUMEI》

「彼氏がいるのに、浮気ですか?」
「…違うよ、話があるんだ」

祐希が徹の腕を掴んだ。

「志穂が、買い物行くって言って、帰って来ないんですよ」
「大丈夫、俺が、留守番する」

俺は、手に持っている『お泊まりセット』とスペアキーを見せた。

「それ、誰から?」
「…大さん」

徹は少し驚くと、祐希に向かい、
「ちょっと待っててもらえますか?」

と言った。

祐希が頷いて腕を離すと、徹が『お泊まりセット』を持って出てきた。

「さぁ、行きましょうか」
そう言って、徹は笑顔で祐希の腕に手を回した。

祐希が無言で歩き出す。

一緒に歩き出した徹が、一旦足を止め、俺を見た。

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