《MUMEI》

コンコンッ

俺は、脱衣所のドアをノックした

「は、はい!」

(良かった)

倒れては、いないようだ。
「もう、着替えた?」
「え?、あ、一応…」

俺は中に入ろうとしたが、鍵がかかっていた。

「着替えたなら、出てこいよ」
「…」

ドア越しに、俺はまた話しかけた。

「なぁー、冷蔵庫のケーキ、俺のだろ?
一緒に食べよう?」

「…食べてていいよ」


「パウンドケーキ、そのままだけど?」
「あ、忘れてた!」

カチャッ

やっと鍵が開いた。

「…何、そのタオル」
「…この服が悪い」

『この服』

それは、胸元が大きく開いた白いシャツワンピースだった。

志穂は、頭からタオルをかぶって顔を隠し、首に巻いたタオルで胸元を隠していた。

(…なるほど)

そこに、志穂の秘密があると、俺は確信した。

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