《MUMEI》

「それにしても、あんた、相当お人好しですよね」

部屋に入ると、徹は座りながら、そう言った。

「そうでもないさ、慎限定だから」
「愛してるんですね〜」
俺の言葉に、徹はしみじみ感想を述べた。

「お前はいいのか、志穂の事?」

正直、こんなにあっさりと連行できるとは思わなかった。

「仕方ないですよ。
志穂の両親から、志穂に近付く男に嫌がらせをするように言われてますけど…
『高山兄妹公認』の場合は、例外ですから」

(…嫌がらせ?)

「お前、両親が志穂に選んだ、相手じゃないのか?」
「あぁ、あれ、嘘です」
徹がニッコリ笑った。

そして、俺は、徹が来た『本当の理由』を知った。

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