《MUMEI》

「お、いい匂い」

俺が出てくると、志穂が台所で味噌汁を作っていた。
「じゃあ、私もシャワー浴びるね」

志穂は、火を止め、俺の横を早足で通り過ぎた。

照れているようで、俺の顔をまともに見ていなかった。

俺は、冷蔵庫から、ミネラルウォーターのペットボトルを出して、喉を潤した。
「お待たせ」

―数分後。

タートルネックの上着に、ロングスカートの志穂が現れた。

「残念。さっきのシャツワンピースが良かったな」
「…今、二月だから」

志穂が、うつむきながら答えた。

そして、俺達は、ダイニングキッチンのテーブル席で、純和風の朝食を食べた。
志穂は、朝食の片付けが済むと、昨日アルミホイルで包んだパウンドケーキを切り分け、ラッピングを始めた。

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