《MUMEI》

「もしもし、俺です。
はい、食付きました。
これで俺、帰っていいですよね?…は?…
あぁ、そっちは大丈夫です、はい。
で、いつこっちに?
え?! はい…」

(何だろう)

徹は背筋を伸ばし、相手に何か報告しているようだった。

(ん?)

赤くなっていた、志穂の顔が、今は青い。

「どうした?志穂?」

「ま、さか…」

ピッ

徹が、携帯を切った。

「その、まさか、ですよ。
じゃ、俺は、役目終わったから、アメリカに帰ります」

「「「帰る?!」」」

徹以外の三人が、一斉に驚いた。

「徹、君?」
「大丈夫ですよ。林先生にはよく伝えておきましたから。
ちゃんと、病院通えば、子供も産めますよ」
「え?」
戸惑う志穂に、徹は優しく微笑んだ。

「じゃ、皆さん。さようなら。

今夜、志穂の両親がここに来るから、ちゃんといて下さいね」

「「「!!!」」」

俺達は、言葉が出なかった。

徹は、いつでも帰れるように用意しておいたであろう、大きなキャリーバックを出してきて、頭を下げた。
「待って徹君!」
「嫌です、そろそろ帰らないと、ケイトが泣きます」「そ、れは、そうだけど…」

(ケイト?)

俺は、首を傾げた。

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