《MUMEI》

そして、運命の時はやってきた。

俺達三人が、テーブル席に座っていると…

ガチャッ

チャイムではなく、鍵を開ける音がした。

そして、扉が勢いよく開いた。

「母さん?」
「ただいま〜志穂〜
会いたかったよ!」

志穂の母親―果穂さんは、そう言って、志穂を抱き締めた。

(若い)

果穂さんは、とても四人の子持ちとは見えないほど、スタイルがよく…
大さんとよく似た美しい顔立ちをした、長身の女性だった。

「やぁ、志穂。久しぶり」
二人分の荷物を持ったスーツの男性に、志穂は、果穂の腕の中から頭だけを何とか向けて、

「おかえりなさい、父さん」

と言った。

(父さん?)

言われて見れば、その男性―大志さんは、秀先輩似の細い目をしていた。
印象は正直、地味、だが…
(あ…)

俺達に向けられた柔らかい笑顔は、素の志穂の笑顔によく似ていた。

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