《MUMEI》

人数が増えたので、俺達は、リビングのソファーに座る事にした。

「…さて」

果穂さんが、まず、俺を見つめた。

「やっと、慎君、うちの志穂に食い付いたって?」
「食っ…」

「母さん!」
俺と志穂が真っ赤になったのを見て、果穂さんは、ニヤニヤしながら続けた。


「いや〜、徹を説得して、送り込んだかいがあったよ。
やっぱり、恋愛を発展させるには、わかりやすいライバルは必要だよね」

―つまり。
徹の、俺を挑発するような言動は、俺と志穂の仲を発展させる為の『演技』だったのだ。

その、わかりやすいライバルの存在で、俺と、志穂が結ばれたのは、事実だが。
「あの…」
「ん?」

俺は、恐る恐る訊いてみた。

「それで、俺が諦めちゃったら、どうしてました?」
「ん?二度と会わせないように、志穂を海外に連れだして、私が選んだ男と結婚させてたよ?
徹の他に、ちゃんと選んであったから」

…サラリと果穂さんは言った。

やはり、かなり、怖い人だ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫