《MUMEI》

(え?)

「母さん?」
「あの…」
「いいんですか?」

俺達は、あんまりあっさり認められて、戸惑ってしまった。

「私、慎君と同じで、両方同じ位好きなら、どっちも取るタイプだし。
…ね、あなた?」
「そうだな。切ない時もあるけど、好きなら、仕方ないな。
今は、私だけだが、母さんにも『彼女』がいた時があったし」

それまで無言だった、大志さんが、口を開いた。

「…志穂は、ずっと慎君が好きだったけど、今まで、自分は好かれる筈がないと、諦めていたんだ。
その志穂が、男の恋人がいてもいい位、慎君の側をはなれたくないと決めたなら、私も、他の兄妹達も、反対はしないよ」

「父さん…」

大志さんの言葉に、志穂は涙ぐんだ。

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