《MUMEI》

途中の水道でくつを軽く洗って、屋上の階段を上る。


物置みたいになってる踊り場で、丁度いい感じの針金を見つけた。



…これで、開くかなあ??


先を曲げて、鍵穴に差し込み、がちゃがちゃと動かしてみる。



と―…



かちり。



軽い音がして、鍵が開いた。


ノブを掴んで、回す。



ギィ…


鈍い音を立てて、ドアが開いた。



初めて踏む屋上の床。


なんだか不思議な感じがした。



空が近い。


太陽がきらきらと、雨上がりの水滴を輝かせている。



あたしは、屋上の端、手すりのところに腰掛けた。


コンクリートの手すりの周りに、金網はない。



くつを隣に置いて、大きく伸びをする。



昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴った。


このまま、服とくつが乾くまでここにいよう…


と、ひと息ついたとき。



がちゃ、


と音がして、それから、扉の開く音―…



あ!!


鍵!掛けわすれてた!!



……だれ―…??



気になって、扉の方へ顔を向ける。




「……あれ!?」



あたしの声に振り向いたのは、



彼―…、


二階堂君だった。

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