《MUMEI》

体育館横の更衣室に着き、サユは着替えが済んでいるので荷物をロッカーに詰め込み、先行ってるね、と言い更衣室を後にした。

ロッカー…と言っても、鍵が付いているわけでもなく、ただポカンと口を空けただけの四角い穴だ。

これを、その日体育館を使う部活動の生徒全員が使う(もちろん男女は別)。

「バスケ部の更衣室・部室」っていうのがなかったし、部活固有の更衣室・部室は一部を除いては運動部にはなかった。

だから当然混むわけで…

そうなると、考えたくもないけど盗難の心配もあるわけで…

サユのように、教室かどこかで着替えを済ませてから向かう生徒も多かった。

バレー部だけは顧問が厳しくて、「まだ始まっていない部活動の前にジャージなんかで校舎を歩くな!生徒は制服を着て校舎を歩くものだ!」と言う理由でそれは禁止されていた。

着替えを済ませ、制服を鞄に突っ込み、バッシュを履き、紐をきっちり結び、放置された共用のボロ雑巾でバッシュの底を拭き、鞄を空いているロッカーにボフッと置き。

『…よしっ。』

あたしは更衣室を後にした。

ただ一つの行動をし忘れて。





その日の帰り、あたしは泣きながら帰ることになった。

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