《MUMEI》

どうしてこんなやり取りが成されるかと言うと。

これも広田の影響なんだけどね。

休憩時間は用意するから、それ以外で勝手に抜けたり、不用意に更衣室には入るなって。

とにかくあたし達バスケ部は、技術以前の問題から根本的に修正されていった。

この時、その救いの休憩は…

終わっていた。

男子からペアで、最初は右レイアップ。

手前のゴールからスタートし、奥のゴール前までパスをし合いながら、最後は右に付いていた者が2歩で右レイアップ。

パスももちろんちゃんと2歩以内で。

これがちゃんと入ったら左に付いていた者がボールを受け、続けざまに折り返して手前のゴールに向かいながら、今度は左にいた者が同じようにゴール前で2歩で右レイアップ。

どちらかがシュートミスをしたら、もしくはボールをこぼしたら、あと当然3歩以上ボールを持ったら、広田の薄い唇に挟まれた笛がピー!っと鳴り激が飛びその時点で最初からやり直し。

走るスピードがだらしなくても、ピー!

3回やってダメなら次のペアに飛ばされる。

それを、やってるペア以外の全員が見ている状態。

これ、バスケ経験者なら出来て当然、いちいち失敗する意味がわからないって思うかもだけど、あの空気の中に放り込まれたウサギの心臓は…

泣。

でも、だからこそ気合が入るし実になるんだよね。




更衣室は手前のゴール付近にある。

つまり。

部員がごったがえし、人壁が出来て広田の死角になり…

更に女子、しかも2年や1年の順番が来るまで少しだけ時間がある…

チャンス!!

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