《MUMEI》 真緒ちゃんに促されながらいそいそと更衣室に向かい、なるべく音が出ないように戸を開けて中に入った。 「一葉さん、大丈夫ですっ。」 入り口で真緒ちゃんが、広田の動きと回ってくる順番を見ててくれている。 真緒ちゃんの方を向くと、その開いた戸からもう順番を終えた、後の男子キャプテン、稲田がニヤニヤして見てた。 シッシッってあっち行けのジェスチャーをすると、真緒ちゃんが 「?」 な顔。 『あっ、違う、…真緒ちゃんじゃなくて後ろっ。…ごめんね、ありがと!』 そう言うと振り返り、真緒ちゃんは稲田に向かって申し訳なさそうに頭を下げた。 ははっ。 …って、こんな悠長な事してらんない! 『真緒ちゃん、一旦閉めるねっ。』 「あ、はい!私ここにいますからっ。」 ううっ…なんてかわいい後輩だ。 本当は学校指定のTシャツ、ジャージを着てなきゃいけないんだけど、あたしはジャージの下に私服のロングのシャツを着ていた。 だって…夜寒いし。 部活の後はそのまま塾に直行だし。 真緒ちゃんはこのロングシャツの事を知ってるから、あんなやりとりになっていた。 …そもそもあたし以外みんなTシャツだったんだけどね。 ジャージとロングシャツを脱いでTシャツを着た時、腕に違和感を覚えた。 前へ |次へ |
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