《MUMEI》
履き潰したスニーカー
 反射的に二人は頭を抱えて地面に体を伏せる。
しかし、二人の耳に届いたのは爆発や破壊音ではなく、複数のマボロシたちの悲鳴だった。

 羽田は頭を抱えていた手をそっと解き、顔を上げた。
目の前で次々とマボロシたちが消えていく。
その先に、ボロボロに履き潰したスニーカーが見えた。

「あれは……?」

羽田の声に答えるように凜が続けた。

「レッカ」

そこに悠然と立っているのは紛れも無いレッカだった。
手には少年の姿には不釣り合いな大きな口径の銃が握られていた。

「おお、誰かと思えば凜と先生じゃねえか」

レッカは片手を挙げてそう言いながら、羽田たちの元へ駆け寄った。

「なんだ、凜。怪我したのか?」

「平気。それより、あっちもどうにかしてくれる?」

凜は後方でまだこちらを狙っているマボロシたちを顎で指した。

「おう。任せとけ」

レッカはニヤリと笑うと、銃を構えた。
マボロシたちは一様に唸りながら姿勢を低くすると、一斉に地面を蹴った。
それと同時にレッカは引き金を弾く。

銃口から飛び出した弾丸はマボロシに届く前に弾け、鋭い光を放つ。
あまりの眩しさに、羽田は思わず目を閉じてしまった。
そして次に目を開けた時には、マボロシたちは全て悲鳴をあげながら倒れていた。

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